Titan Missile Museum



Arizona州南部のGreen Valleyに行きました。世界最強の要塞がそこにあるのです。
その武装は大都市を一瞬にして消滅させ、その防御力は3000度の業火にも耐えます。
しかし、人里離れた土地にあって、守るものを欠くこの「要塞」は本当に要塞と呼べるのだろうか?
この要塞は冷戦時代の遺物、Titan2型ICBMの地下ミサイルサイロです。

冷戦以前の要塞は、大砲への防御を目的にした壁と、
相手の大砲への反撃を目的とする要塞砲より成っていました。
大砲の発達により、壁は石でできた城壁から、土、そしてコンクリートへと変わりました。
大砲は青銅砲から、鋼鉄ライフル砲へと進化してきました。
しかし、ここにある要塞はすでに大砲への防御を考えていません。
世界初の核攻撃を人類が実現し、さらに長長距離攻撃用ミサイルが発明されたため、
要塞は全くその様相を変えました。

もはや城壁はそこにはありません。
唯一壁と呼べそうなのは、ミサイルサイロの防御ふた、760トンの鋼鉄でしょうか。
この要塞を包囲する相手もおりません。
相手は何千キロメートルも離れたかなたの要塞にいます。
そして、大砲もなければ、備蓄されている砲弾もありません。
この要塞の武装はたった一発の核ミサイルだけです。
しかしその弾頭は10メガトン(TNT火薬一千万トン相当)の熱核爆弾(水素爆弾)だそうです。
地球上のどの地点へも30-40分で到達します。
この要塞は通常の要塞と違って、数度の攻撃に耐えるようにできてはいません。
相手の一回の攻撃を耐え、たった一回の反撃をするために存在しているのです。
このような基地は、ここアリゾナ州をはじめ、
カンサス州とアーカンソー州にそれぞれ18基ずつ存在します。
厳密には訓練用にあと3基がカリフォルニア州にあります)。
10年の使用に耐えるように設計されたミサイルサイトは、
1963年から実に23年間も実戦体制にありました。
ここは1986年から博物館になりました。

それではご覧ください。Titan Missile Museumです。

写真をクリックすると大きい写真を見ることができます。


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な、なんて小さなはくぶつかん......。しかもぷれはぶ......。
世界最悪の要塞だというのに、ちょっと寂しすぎるぞ。
右奥に見えるのは、ミサイルサイロのふたですよ。


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現在は工事中で、大きな博物館が建設中なのです。
今はこちらがオープンしています。

ともかく、プレハブ小屋の中で、入場券を買います。
AAAのメンバーだとお金を引いてくれます。
しばらくそこのミュージアムショップをのぞいていると、
おじさんが来て、ツアーの始まりとなります。
安全のためのヘルメットが支給されます。
ピンク色と青と銀色と白があるので、好きな色を選べます。


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アリゾナの炎天下の中、まずは地上設備の見学です。
地上設備は、全く防御されていません。
核攻撃があったらみんな燃えます。
はじめに案内されるのは、この燃料を供給する設備でした。
ただでさえデリケートなロケットを、
24時間365日、何十年も稼動状態に保っておくのは恐ろしいほどの精神力だと思います。
ほんのちょっとした故障でも宇宙探査用のロケットの発射を延期したりするのに、
このTitan2型ICBMは命令が来たら、3分以内に射撃されます。
きっと半分くらい発射に失敗したっていいと思っていたのでしょう。

デリケートな温度管理を必要とする危険な燃料AEROZENE-50(hydrazine系)と、
酸化剤nitrogen tetraoxideを毎日ここで扱います。


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Titan2型ICBMです!地表から覗いたところです。
後で述べますが、サイロのふたは半開きのまま固定されています。
ロシアの偵察衛星にミサイルが発射可能状態にない事をいまだにずっと見せているのです。

写真では分かりにくいですが、とても大きいです!
その気になれば人工衛星を打ち上げられる機体ですから、それも当然か。
僕は弾道弾を見るのはこれが4本目ですが、ロシアのSS何とかと同じくらい禍々しいです。
しかももともと実戦状態にあった核ミサイルを見るのは、とても恐ろしいものでした。
これは二段式ロケットで、弾頭は大気圏外から目標に突入します。
このミサイルサイロにミサイルの再装填はできません。
このミサイルサイト自体が、たった一回の射撃をするために構成されています。
まだこのサイトが残っていると言うことは、幸運なことに人類は核ミサイル戦争をしないで済んだということですね!
よかったよかった。


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これが弾頭、熱核爆弾の詰まったMark IV reentry vehicleです。
文字通りこの弾頭は大気圏外から目標に突入します。
アメリカ空軍は確かまだ公式には弾頭の水爆の威力を公開していませんが、
情報では10メガトン(TNT火薬一千万トンと同じ威力)、広島型原爆の400倍だという話です。
そうだとすると、1952年10月31日に世界で初めて行われた熱核爆弾実験の威力とほぼ同じということになりますね。
単一のミサイル弾頭としては、アメリカで最大です。

ガイドのおじさんは、ここで始めて「君は日本人か?」と聞いてきました。
「広島」という言葉を日本人の前で使うことに抵抗があったみたいです。
僕はそのデリカシーめいたものにちょっとだけ好感を持ちました。
僕にとっては、この熱核爆弾がいかに狂気に満ちたものであろうと、
日本はその熱核爆弾によって守られてきたのは事実だと思ってます。
日本が世界で唯一核攻撃を受けた、核攻撃の痛みの分かる国であっても、
非核三原則で一応日本には核兵器がなくとも、
冷戦という枠組みの中で、アメリカの核戦略に組み込まれていたのは厳然たる事実です。
この矛盾、ちょっと苦しいです。
本当のことを言うと、この矛盾があろうとどうだろうと、
開き直って国際社会で「非核」「非戦」を声高に唱えることが、
日本の取るべき道じゃないかなと僕は思います。
僕は恥も外聞もなく(?)、すべての戦争に対して反対したっていいと思います。
そういう国があってもいいと思うんです。

以前(1998年)友人のインド人に、「インドが核開発するのは国際的に望ましいことなんだろうか」と言うと、
「インドはどの大国とも同盟していない。インドは自分で自分を守らなくてはいけない。
インドは中国、パキスタンといまだに緊張関係にある。少なくとも中国は核戦力を持っている。
インドは核装備して、中国の脅威から自分を守らないといけない。
アメリカの核戦力に守られている日本はいいよなぁ。」と言われました。
本当に核装備して防衛ができるのかは議論のあるところでしょうが、
冷戦の行く末を見る限り、「防衛できる」と言う気持ちも分かります。
ともかく、こういう議論はとても難しいものですね。


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Titan2は二段式のロケットです。
ここではそのロケットエンジンも見ることもできます。
それは屋外においてあります。

これは第一段目のロケットのノズルを覗いたところ。
性能などは違うサイトで確認してね(笑)
例えば、こちら「SM-68B Titan II 」はどうでしょう?


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これが、ミサイルサイロのふたです。
760トンのふたは、信号が送られると、強力なモーターによって20秒ほどで全開になります。
果たしてこのふたで核攻撃を耐えることができるのでしょうか?
たぶん核攻撃の直撃を耐えることはできません。でも至近弾ならあるいは耐えられます。
一回だけなら。
相手の攻撃が行われる前に反撃のミサイルを撃つのが基本でしょうが、
万が一に攻撃を受けたあとでも、
確率的に生き残った何基かのミサイルを反撃に使えるようにと考えられています。
この要塞は、普通の「攻撃を受けても受けても破壊されない要衝を守る要塞」とは違います。
これを冷戦型要塞と呼んでもいいんじゃないかなって思います。

さて、右側を見ていただけますか。


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現在は、ふたを開くモーターへの太いケーブルは切断され、
さらにコンクリート製のキューブがいくつもおかれて、
ミサイルサイロのふたは「半開き」で固定されています。
このミサイルサイロがアクティブでないことをロシアに見せるためにそうなっているんです。

アリゾナの静かな砂漠の中、こんな狂気が地面の中に潜んでいるのは驚きですね。

この後、僕らは地下に降りて、
要塞内部を見学しました。


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地面にすえてある鋼鉄のドアを開けると、そこには簡素な階段がありました。
写真の階段をさらに進むと、その先にはさらに階段があります。
緑色に塗られたなんだか非常階段みたいな階段です。55段あります。
この階段を使ってしか、内部への出入りはできません。
階段を降りきると簡単な扉があります。
そして、ミサイルサイトの人員の交代もそこで行われます。
冷戦時代の人員交代には非常に厳密なルールがあって、
いったい誰がこのルールを決めたのか、そのアメリカの取り付かれた妄想に眼が回ります。
その簡素な扉を開けると、いよいよ防御された要塞への入り口に到達します。


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ここは、そのアクセス・ポータルから要塞内部に入る入り口です。
ここからが対核防御をされている区域です。
(つまり核攻撃があると、アクセス・ポータルは燃え尽きます。
その後どうやって内部の人は外に出るんだろ???)
Jimの右側にある鋼鉄の扉は約3トンあります。
この扉二枚が閉まると、要塞内部の空気は完全に外部と遮断され、
核攻撃のブラストと危険物質から内部の機器と人員を守ります。
この扉の厚さは、左上の内部にピンのある四角い物体と同じです。
扉が閉まると、このピン四本が扉を固定します。


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司令室です。女の子が座っている席が、ミサイルサイトの司令官の座る椅子。
ここと、左側の壁に「キー」があります。
その二つのキーを二秒以内に同時に回し、5秒間維持することで発射シーケンスが始まります。
発射命令を出せるのは、最高司令官 発射シーケンスの詳細については、このサイトをどうぞ。

この女の子はこの数秒後に核ミサイルのキーを回します。
キーをまわすと、ほぼ自動的に手順が進んでいきます。
その段階で二回サイレンがなるのですが、
僕らは唐突に鳴るそのサイレンに飛び上がって驚きました。

発射シーケンスが始まると、自動的にミサイルが発射され、
飛行に問題がなければ30-40分後には核爆弾が目的地で炸裂します。
この女の子は、「核ミサイルのキーがこんなにスムースに回るとは思わなかった」と言っていました。
今まで他人事だった「核戦争」を身近に感じるきわめて特異な瞬間でした。

この要塞が旧来型の要塞と違うことの一つは、
核攻撃のブラストを吸収するための仕組みを内部に持っていることです。
何本ものばねで、地表での核爆発の衝撃から内部の人員と機材を守るのです。
この司令室は巨大なばね8本(記憶あいまい)で、地底に吊り下げられている格好です。
左奥にそのばねは見えます。


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これがばね。


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24時間制の時計です。世界標準時で動いています。
ここはアリゾナにありながら、非日常な時間が流れています。
アメリカでは14時50分とか、22時30分と言う24時間制の言い方は、
Military timeと呼んだりします。


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ここで担当官は、ミサイルサイトの人員すべての位置を把握しています。


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司令室にあるマニュアル。

当たり前のことですが、このミサイルシステムができたのは1963年のことで、
たとえ陸軍とMITの最高の頭脳が結集したところで現在から見るととても古めかしいシステムです。
まっとうなコンピュータもプログラミング言語もありません。
メインの制御装置はモジュール式で、ある部分が故障したら、
そのモジュール(引き出しみたいになってます)を丸ごと取り替えることで対処します。
ミサイルのターゲットは事前にプログラミングされ、発射時に変更はできません。
ターゲットの変更は、ターゲットへの情報を記載した紙テープ(!!!!)を、
システムに読ませることで行います。
か、かみてーぷ......汗。
ガイドの人は、「誰にも読めないし、EMPの障害も受けないから、保安上よろしい」と言っていましたけど(笑)。
ともかく、故障したときのマニュアルがこれらです。
マニュアルはいつの時代も紙ですね(笑)

さて、次はミサイルサイロを訪ねます。


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司令室から、ミサイルサイロに向かう通路です。
左右に見えるばねばねばね......。
これらも先ほどのばねと同じく、核攻撃の衝撃を吸収する目的で設置されています。


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さて、たどり着きましたミサイル本体。
この写真は、Titan2の一段目と二段目の境目を撮ったものです。
色の違うところで分かれてます。


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ミサイル本体とアクセスできる足場です。
アクリルガラスのせいで写真が取りにくかったです。

ここでツアーは終わりでした。


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アンテナ。
核攻撃の指令を受け取るのかな?
ちなみにこれ以外にも、地中に格納式のアンテナなど、
複数のアンテナがありました。


また気が向いたら追加の写真をアップするかもしれません。


参考資料
Titan Missile Museum
公式サイト。行き方から、歴史まで。

The Pima Air & Space Museum
Pimaの飛行機を保存しておく博物館の公式サイト(?)。
僕は行っていませんけど、実はこっちのほうがすごい(笑)。

SM-68B Titan II
Titan2型ICBMについてのサイト。よく作ったなあ。



いかがでしたか?
冷戦の時代の遺物、世界最強最悪の要塞でした。
ちなみに、土産物屋さんにTitanミサイル料理本があります(謎)
ともかくとっても興味深い、非日常を経験できました。
あんまり外国人の行かない場所ですが、お試しくださいませ。

formessure 8/30/2003

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